高齢化社会にあたって「せん妄」の理解をみんなと深めたい

論文を考察し、市民の方と共有し始めたのは開院から一定の時間経ってからのことです

ホームページ内もしくはリンクされる情報はword pressで作成しておりお化粧をされておりませんので少々見づらく申し訳ございません。クリニックを立ち上げたときから責任をもって診察以外の面も状況を把握して私自身がクリニックの広報や連携医療機関や施設行政との関わりがあるソーシャルワーカーとしての役割、また医療事務職と少しづつですが相互理解のために勉強してきたものです。おかげ様で外来にはたくさんの患者様にいらしていただいておりますが、当クリニックでは今後も非常勤であれ医師の雇用は考えておりません。非常勤医師の継続率は低く、医師の資質もありますが何より非常勤であってもかかりつけ医が離れることが患者様への影響を考慮したためです。分院や外来のブースを増やすことは営利上いま推し進めることとわかってはいますがこのスタンスで5年目も運用を続け全体を診察に特化せずに動体であるクリニックを動かしながら精一杯の包括的な医療や運営をしていきます。そのなかで、このブログの作業ですが実は小医のような零細クリニックであれ営業がいらっしゃり「先生のお手間でしょうから」と提案された文章は疾病名への簡単な周辺知識しかなく、市民の方がご自身でクリニックを検索するのと同様が多く医療コンサルティングがWebライターに書いてもらいっているのがよく見てきた世界観です。それを求めている市民もたくさんしらっしゃることも知っておりますが他にもそのようなクリニックは多数あります。私はせっかく、ホームページまで入り込んでくださった方にはほんの一つでも簡単にたどり着けない知識を共有させてもらえたらと思い、鮮度もある論文選定しております。

過去格納されている論文もエッセンスであれ、日常生活に落とし込めるものがあるかもしれません。読んでいただいた以上は、お土産のような知識で生活の質が上がれば私にとってはまったく苦ではなく嬉しい作業です。本日は総合病院における「せん妄」の状況と可能な限り防げる薬剤についてですね。

簡単ではありますが、まず「せん妄」についてご説明します

せん妄は、突然発生して変動する精神機能の障害で、通常は回復可能です。注意力および思考力の低下、見当識障害、覚醒(意識)レベルの変動を特徴とします1)

一見認知症のように思えますが、異なるのです

せん妄では主に注意力が障害され、認知症では主に記憶力が障害されます

せん妄は突然発生し、始まった時点を特定できる場合が多いです。認知症は一般にゆっくり発生し、いつ始まったのかをはっきり特定できません

せん妄はどの年齢層でも起こりえますが、高齢になるほど多くなります。介護施設の入居者にはせん妄が多くみられます。若い人のせん妄は、通常薬物使用または生命を脅かす病気が原因で起こります。

せん妄は施設入所中や長期入院中の患者さまの15から50%に発生し、合併症を引き起こす可能性が10倍に引きあがります。またせん妄を引き起こすと、せん妄そのものとは限りませんが、35%が何かしらの要因で死亡に至るためにせん妄予防は非常に重要です

原因となりえる、脱水・感染・低栄養。褥瘡をチームスタッフと共有することがまず大事であり、医師薬剤師は不要なせん妄を引き起こす薬剤の減薬中止も予防では重要となります

総合病棟の高齢患者における認知症に重なるせん妄の危険因子。

Risk Factors for Delirium Superimposed on Dementia in Elderly Patients in Comprehensive Ward.2

OBJECTIVE : To investigate the incidence of delirium and its related risk factors in patients with senile dementia during hospitalization.

目的: 入院中の老人性認知症患者におけるせん妄の発生率とそれに関連する危険因子を調査すること

METHODS : A retrospective analysis of clinical data of 157 patients over 65 with cognitive impairment who were hospitalized in the comprehensive ward from October 2019 to February 2023 was conducted. Patients were assigned into delirium and non-delirium groups according to whether they exhibited delirium during hospitalization. General information about the patients and Visual Analogue Scale (VAS) score, blood C-reactive protein level, and blood superoxide dismutase (SOD) level were recorded. Univariate analysis was used to identify potential risk factors for delirium, and factors with statistical significance were subjected to multivariate logistic regression analysis. A prediction line chart for delirium in elderly dementia patients was constructed using R 4.03 software, and the model was validated.

方法:2019年10月から2023年2月までに総合病棟に入院した65歳以上の認知障害患者157人の臨床データの遡及的分析を実施した。患者は、入院中にせん妄を呈したかどうかに応じて、せん妄群と非せん妄群に割り当てられた。患者に関する一般情報、Visual Analogue Scale (VAS) スコア、血中 C 反応性タンパク質レベル、血中スーパーオキシド ジスムターゼ (SOD) レベルが記録されました。せん妄の潜在的な危険因子を特定するために単変量解析が使用され、統計的に有意な因子は多変量ロジスティック回帰分析に供されました。高齢認知症患者のせん妄の予測折れ線グラフが R 4.03 ソフトウェアを使用して作成され、モデルが検証されました

RESULTS : Among the 157 patients with senile dementia, 42 patients exhibited delirium and 115 patients exhibited non-delirium. Multivariate logistic regression analysis showed that diabetes, cerebrovascular disease, VAS score ≥4 points, use of sedative drugs, and blood SOD <129 U/mL were independent risk factors for delirium during hospitalization in elderly dementia patients. A prediction nomogram was plotted based on the five risk factors, and receiver operating characteristic curve analysis presented an area under the curve of .875 (95% CI: .816-.934). The nomogram model was internally validated by the Bootstrap method, and the calibration curve showed good agreement between predicted and actual results. Hosmer-Lemeshow test demonstrated that the model had a good fit and high predictive ability.

結果 : 老人性認知症患者 157 人のうち、42 人がせん妄を示し、115 人が非せん妄を示した。多変量ロジスティック回帰分析により、糖尿病、脳血管疾患、VAS スコア 4 点以上、鎮静剤の使用、血中 SOD 129 U/mL 未満が、高齢認知症患者の入院中のせん妄の独立した危険因子であることが示されました。 5つの危険因子に基づいて予測ノモグラムがプロットされ、受信者動作特性曲線分析では、曲線下面積 .875 (95% CI: .816-.934) が示されました。ノモグラム モデルはブートストラップ法によって内部検証され、検量線は予測結果と実際の結果がよく一致していることを示しました。 Hosmer-Lemeshow 検定により、モデルの適合性と高い予測能力が実証されました

CONCLUSION : Diabetes, cerebrovascular disease, VAS ≥4 points, use of sedative drugs, and blood SOD <129 U/mL were independent risk factors for delirium in patients with senile dementia during hospitalization. The nomogram model had good accuracy and clinical application value for predicting delirium in this study.

結論: 糖尿病、脳血管疾患、VAS 4 点以上、鎮静剤の使用、血中 SOD <129 U/mL は、入院中の老人性認知症患者におけるせん妄の独立した危険因子でした。このノモグラム モデルは、この研究におけるせん妄を予測するための精度が高く、臨床応用価値がありました。

論文においては脱水や感染症に加えて糖尿病や脳血管疾患など血管性病変ならびに内服薬では鎮痛剤の使用がせん妄リスクとして認められました。実際に臨床の場では整形外科疾患における慢性的な高齢者の鎮痛剤使用は想像よりも多いものです。個人的にはそこまで抗炎症作用はないものと思っているのですが・・。次月には慶応大学薬学部講師兼昭和薬科大学講師である三谷薬剤師主宰の薬剤師向け勉強会があります。この論文を読み施設での鎮痛剤処方について医療関係者とも意識付けを思った対応をしていきたいです。貴方のお父様やお母さまにカロナールやロキソニンの調布役ならびに内服薬が漫然とでていませんか?果たしてそれは必要なお薬なのでしょうか。

1) Juebin Huang , MD, PhD, Department of Neurology, University of Mississippi Medical Center.2021,March

2)Qifan Xiao, Suqiao Zhang et al; JournalAmerican journal of Alzheimer’s disease and other dementias. 2023 Jan-Dec;38

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