日常生活における「笑い」は認知機能にどう影響を与えるのか?

新しい季節がひと段落し、疲れもたまりやすい時期でもありますのでときに、ひと息をつきながら抱え過ぎずに生活をしていけたらいいのかなと思っております本日ご紹介する論文は認知症と日常に関する論文で日本の研究者によるものです年齢を重ねると社会的関係が希薄となりがちです都市部ではご近所付き合いや海外におけるホームパーティーなど文化的背景もあることでしょう。ひとりになったとき、また孤独を感じた時皆さまの癒しはなにですか?日本のテレビ番組でお笑い番組が増えているのも親しみや愛着を求めているかもしれません

認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。 アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。 次いで多い血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によっておきる認知症です2)

では笑いと認知症のリスク(発症の危険度)についての論文サマリーです

笑いと認知症のリスクの機会:6年間のコホート研究からの所見1)

AIM : Currently, there is little evidence on the relationship between laughter and the risk of dementia, and since laughter is mainly a social behavior, we aimed to examine the association between various occasions for laughter and the risk of dementia in Japanese older adults.

目的:現在、笑いと認知症のリスクとの関係についての証拠はほとんどなく、笑いは主に社会的行動であるため、日本の高齢者における笑いのさまざまな機会と認知症のリスクとの関連を調べることを目的としました。

METHODS : We draw upon 6-year follow-up data from the Japan Gerontological Evaluation Study, including 12 165 independent older adults aged 65 years or over. Occasions for laughter were assessed using a questionnaire, while dementia was diagnosed using the standardized dementia scale of the long-term care insurance system in Japan. Cox proportional hazards models were estimated, yielding hazard ratios and 95% confidence intervals (CIs).

方法:65歳以上の12 165人の独立した高齢者を含む、日本老年学評価研究からの6年間の追跡データを利用します。笑いの機会は質問票を用いて評価され、認知症は日本の介護保険制度の標準化された認知症尺度を用いて診断された。コックス比例ハザードモデルが推定され、ハザード比と95%信頼区間(CI)が得られました。

RESULTS : The multivariable hazard ratio of dementia incidence for all participants in the groups for high versus low variety of occasions for laughter was 0.84 (95% CI: 0.72-0.98, P for trend <0.001). A greater variety of occasions for laughter was associated with a lower risk of dementia 0.78 (95% CI: 0.63-0.96, P for trend <0.001) among women, but was less pronounced for men, with significant associations only for the medium group. Laughing during conversations with friends, communicating with children or grandchildren, and listening to the radio were primarily associated with decreased risk.

結果:笑いの機会が多い場合と少ない場合のグループのすべての参加者の認知症発生率の多変量ハザード比は0.84でした(95%CI:0.72-0.98、傾向<0.001のP)。笑いの機会の多様性は、女性の認知症のリスクが低いことと関連していました(95%CI:0.63-0.96、傾向<0.001のP)が、男性ではそれほど顕著ではなく、中程度のグループでのみ有意な関連がありました。友人との会話中の笑い、子供や孫とのコミュニケーション、ラジオの聴取は、主にリスクの低下と関連していました。

CONCLUSION : A greater variety of laughter occasions in individual and social settings was associated with a reduced risk of dementia. Geriatr Gerontol Int 2022;

結論:個人的および社会的状況でのより多様な笑いの機会は、認知症のリスクの低下と関連していた。

この論文の面白さは男女に有意差がついたことになります。私の周りには男性の友人の方がお笑いを好むような傾向がありましたが、笑い・癒しにより女性が情緒的安定を獲得され良眠をとられたのではないかと推測しました。ディスプレイ鑑賞は不眠や被刺激性の亢進を生むため、対面やラジオなど音声(人の声)の重要性を改めて確認できました。わたしは現在ジェーンスーさんのラジオが好きですが皆さまのおすすめを教えていただけたら嬉しいです。

1) Yu Wang, et al: Geriatrics & gerontology international. 2022 Mar 14

2) 厚生労働省 みんなのメンタルヘルス総合サイトより抜粋

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