押し活が与えるメンタルへの影響と人生や心の変化

「推し」とは、応援するアイドルやキャラクター、俳優、声優、アーティスト、アニメ、漫画など、特定の対象を指します。そして、「押し活」とは、その推しを応援するさまざまな活動全般を指す言葉です。近年、SNSの普及や多様なコンテンツの登場により、押し活は多くの人々にとって身近なものとなりました。単なる趣味の範疇を超え、人生の一部として深く関わる人も少なくありません。

この押し活が、私たちのメンタルに与える影響は多岐にわたります。ポジティブな側面としては、喜びや幸福感、生きがい、社会との繋がりなどが挙げられます。一方で、ネガティブな側面としては、金銭的負担、時間的制約、人間関係の悩み、不眠、不安、抑うつ気分燃え尽き症候群など、様々な課題も存在します。本稿では、押し活がメンタルに与える影響、そしてそれを通じて人生や心に起こる変化について、多角的な視点から詳細に掘り下げていきます。

1. 押し活のポジティブな影響:心に光を灯す存在

押し活は、私たちの心に多くのポジティブな影響をもたらします。日常生活に彩りを与え、困難な状況を乗り越えるための原動力となることも少なくありません。

1.1. 喜びと幸福感の増幅

推しが存在するだけで、私たちは日常の中で多くの喜びを感じることができます。新しいコンテンツの発表、ライブの開催、SNSでの発信など、推しの活動の一つ一つが、ファンにとっては大きな喜びの源となります。

期待感と高揚感: ライブやイベントの発表、新曲のリリースなど、推しに関する情報が発表されるたびに、ファンは期待感に満たされます。その日を指折り数えて待つ時間は、日常生活に張り合いを与え、単調な日々を鮮やかに彩ります。

達成感と一体感: ライブ会場で一体となって声援を送る、SNSで推しの話題を共有する、グッズを収集するなど、押し活を通じてファンは様々な形で推しとの一体感を味わいます。特に、ライブでの一体感は、個人の喜びを超え、集団としての高揚感や達成感をもたらします。

推しの成長が自分の喜び: 推しが目標を達成したり、困難を乗り越えたりする姿を見ることは、ファンにとって大きな喜びとなります。それはまるで自分のことのように感じられ、推しの成長が自己肯定感に繋がることもあります。

1.2. 生きがいと自己肯定感の向上

推しは、多くの人にとって単なる趣味の対象ではなく、生きがいそのものとなることがあります。推しを応援する活動が、自己肯定感を高め、人生を豊かにするきっかけとなるのです。

目標設定とモチベーション: 推しに会うため、ライブに行くため、グッズを購入するためなど、押し活は様々な目標を設定するきっかけとなります。これらの目標達成に向けて努力することで、日常生活にもハリが生まれ、仕事や学業へのモチベーション向上に繋がることもあります。

自己肯定感の向上: 推しを応援する中で、自分自身が誰かの役に立っているという感覚や、推しの一部を支えているという誇りを感じる人もいます。また、推しの活動を通じて得られる知識やスキル(例えば、情報収集能力、チケット争奪戦での戦略、ハンドメイドなど)は、自己肯定感を高める要因となります。

自己表現の場: ファンアートの制作、推しへのメッセージを送る、推しについて語り合うなど、押し活は自己表現の場としても機能します。自分の好きなものを表現し、他者と共有することで、自己肯定感が育まれます。お互いが社会での居場所を認証し合うことです

1.3. 社会との繋がりと居場所

押し活は、共通の興味を持つ人々との繋がりを生み出し、新たな人間関係を構築するきっかけとなります。これは、現代社会において、特に重要な役割を果たすことがあります。

共通の話題と共感: 推しという共通の話題があることで、初対面の人とも容易に会話が弾み、深い共感が生まれます。SNSやファンコミュニティを通じて、地理的な制約を超えて多くの人と繋がることができます。

安心できる居場所: 推しという共通の趣味を持つ人々が集まる場所は、安心して自分を表現できる居場所となります。現実社会では理解されにくい趣味であっても、ここでは共感と理解が得られるため、孤独感の解消に繋がります。

協力と連帯感: ライブやイベントの準備、推しのプロモーション活動、災害時の募金活動など、押し活はファン同士の協力や連帯感を生み出します。共通の目標に向かって協力することで、強い絆が生まれます。

1.4. ストレス解消と精神的安定

推しは、現実のストレスや悩みを忘れさせてくれる存在でもあります。推しのコンテンツに没頭する時間は、精神的な癒しとなり、心の安定に繋がります。

現実逃避とリフレッシュ: 推しの世界に没頭することで、一時的に現実の悩みやストレスから離れることができます。これは、心のリフレッシュに繋がり、精神的な負担を軽減します。

心の拠り所: 困難な状況に直面した時、推しの存在が心の拠り所となることがあります。推しの言葉や歌、パフォーマンスが、私たちに勇気や希望を与えてくれることがあります。

ポジティブな感情の誘発: 推しの活動を見ることで、喜び、感動、興奮といったポジティブな感情が誘発されます。これらの感情は、ネガティブな感情を打ち消し、精神的なバランスを整える効果があります。

2. 押し活のネガティブな影響:光と影の葛藤

押し活は多くのポジティブな影響をもたらす一方で、いくつかのネガティブな側面も持ち合わせています。これらの課題を認識し、適切に対処することが、健全な押し活を継続するためには不可欠です。

2.1. 金銭的負担と経済的ストレス

押し活には、多かれ少なかれ金銭的な支出が伴います。この金銭的負担が、時には大きなストレスとなることがあります。

高額な出費: ライブチケット、グッズ、CD/DVD、ファンクラブ会費、遠征費用など、押し活にかかる費用は多岐にわたります。特に、人気の推しの場合、チケットの競争率が高く、高額な転売チケットに手を出してしまうケースも少なくありません。

財政的な圧迫: 押し活にのめり込むあまり、生活費を圧迫したり、貯蓄を切り崩したりする人もいます。これにより、経済的な不安やストレスを抱えることになります。

課金衝動: ソーシャルゲームやアプリ内の課金要素がある推しの場合、限定アイテムやイベント報酬のために多額の課金をしてしまうケースも見られます。これは、依存症に近い状態を引き起こす可能性もあります。

2.2. 時間的制約と日常生活への影響

押し活は、多くの時間を費やす活動です。そのため、日常生活に支障をきたしたり、他の活動とのバランスを取ることが難しくなったりすることがあります。

睡眠不足: ライブやイベントの夜通しの準備、SNSでの情報収集、推しの動画視聴など、押し活に時間を費やすあまり、睡眠不足に陥ることがあります。

学業・仕事への影響: 押し活に熱中するあまり、学業や仕事がおろそかになるケースも報告されています。授業や業務に集中できなかったり、遅刻や欠席が増えたりすることがあります。

プライベートな時間の減少: 友人との交流、家族との時間、他の趣味など、押し活以外のプライベートな時間が減少し、孤立感を深めてしまう可能性もあります。

2.3. 人間関係の悩みとトラブル

押し活を通じて新たな人間関係が生まれる一方で、ファン同士の人間関係の悩みやトラブルも発生することがあります。

嫉妬とマウント: ファン同士でグッズの量や推しへの貢献度を比較し、嫉妬やマウントを取り合うことがあります。これにより、人間関係が悪化したり、孤立感を深めたりすることがあります。

価値観の相違: 推しへの応援スタンスや解釈の違いから、ファン同士で意見の対立が生じることがあります。特に、SNS上では匿名性が高いため、過激な発言や誹謗中傷に発展することもあります。

「同担拒否」問題: 同じ推しを応援する「同担」に対して、嫉妬や独占欲から拒否反応を示す「同担拒否」という現象も存在します。これにより、コミュニティ内での人間関係が限定され、孤立感を深める可能性があります。

情報過多と疲弊: SNSなどで常に推しに関する情報が流れてくるため、情報を追うことに疲弊したり、他のファンの意見に左右されて精神的に不安定になったりすることがあります。

もともと平易に情報が手に入り便利になったとたん、私達の生活はスマートフォンやタブレットに支配されています。ネット依存(ゲーム症・障害)になりやすくもあり、中原こころのクリニックでは外来や訪問診療のなかで往来は趣味で合った程度ものが依存形成を生むことに対して精神科専門医・心療内科医がともに問題点をまず共有認識し必要な場合は即座に治療介入します。当院は武蔵小杉や溝の口からも近医ではありますがお気軽にご相談ください

2.4. 精神的疲労と燃え尽き症候群

過度な押し活は、精神的な疲労を引き起こし、時には「燃え尽き症候群」のような状態に陥ることもあります。疲労の原因を一緒に考えましょう 抑うつ気分なのか、睡眠不足なのか外的要因におけるものだけなのかを考えてみましょう

疲労感と虚無感: ライブやイベントの準備、グッズの収集、SNSでの情報収集など、押し活は肉体的にも精神的にも大きなエネルギーを消費します。推しの活動が終わった後、一時的に燃え尽きたような虚無感に襲われることがあります。

依存と執着: 推しへの依存が高まりすぎると、推しの活動がない期間に精神的な不安定さを感じたり、推しからの反応がないことに過度に執着したりすることがあります。

期待と失望: 推しへの期待が大きすぎるあまり、期待通りの結果が得られなかった場合に、大きな失望感や喪失感を味わうことがあります。特に、推しが活動休止したり、引退したりした場合は、精神的なダメージが非常に大きくなります。

自己肯定感の揺らぎ: 推しが常に輝いている存在である一方で、自分自身と比較して劣等感を抱いたり、推しに貢献できていないと感じて自己肯定感が揺らいだりすることがあります。

3. 人生や心の変化:押し活がもたらす深層の影響

押し活は、単なる趣味の範疇を超え、私たちの人生観や心のあり方に深い変化をもたらすことがあります。ポジティブな変化からネガティブな変化まで、その影響は多岐にわたります。

3.1. 自己認識と価値観の変化

押し活を通じて、私たちは自己認識を深め、自身の価値観を再構築することがあります。

新たな自己発見: 推しを応援する中で、これまで知らなかった自分の一面や、新たな才能を発見することがあります。例えば、推しへの愛を表現するために、イラストを描いたり、動画を制作したりする中で、クリエイティブな才能が開花することもあります。

価値観の再構築: 推しが発信するメッセージや、推しの生き様を通じて、自身の価値観を見つめ直すことがあります。多様な価値観に触れることで、視野が広がり、これまでとは異なる視点を持つようになることもあります。もともと趣味が少ない現代においてあらたな自己発見は生きていることの自己発見でもあります

共感力の向上: 推しや他のファンの感情に触れることで、共感力が高まることがあります。特に、推しが困難に立ち向かう姿や、ファン同士が支え合う姿を見ることで、他者への共感や思いやりが深まることがあります。

3.2. コミュニケーション能力の向上

押し活は、共通の話題を持つ人々とのコミュニケーションの機会を増やし、コミュニケーション能力の向上に繋がることがあります。

対人スキルの習得: ライブ会場やイベントで初対面の人と話す機会が増えたり、SNSで積極的に交流したりすることで、自然と対人スキルが磨かれます。

表現力の向上: 推しへの愛を伝えるために、言葉や文章、イラストなどで表現する機会が増えることで、表現力が向上します。

情報収集・発信能力: 推しに関する情報を効率的に収集し、正確に発信する能力が養われます。これは、情報化社会において非常に重要なスキルとなります。

3.3. 時間管理と金銭管理の意識向上

押し活を通じて、時間や金銭の使い方について意識が変化することがあります。

計画性の向上: ライブやイベントへの参加、グッズ購入のために、事前に計画を立て、時間を効率的に使う意識が高まります。

節約意識の芽生え: 推し活費用を捻出するために、日常生活での無駄遣いを減らしたり、節約に努めたりするようになります。これにより、金銭管理の意識が向上します。

優先順位の見直し: 押し活と他の活動とのバランスを考える中で、自分にとって何が大切なのか、優先順位を見直すきっかけとなることがあります。

3.4. 依存と自立の葛藤

押し活は、人によっては依存に近い状態を引き起こすことがあります。この依存と自立のバランスをどう取るかは、押し活が人生に与える大きなテーマとなります。

精神的依存: 推しが心の拠り所となりすぎることで、推しがいなければ精神的に不安定になる「精神的依存」の状態に陥ることがあります。推しの活動休止や引退などが、大きな精神的ダメージとなるのはこのためです。

自己確立への道: しかし、多くの人は押し活を通じて最終的に自立へと向かいます。推しから得たポジティブな感情や、推しを通じて培った経験やスキルを、自分自身の人生に活かしていくことで、より豊かな人生を築くことができます。

「推しは推し、自分は自分」: 健全な押し活を継続するためには、「推しは推し、自分は自分」という線引きをすることが重要です。推しを尊重しつつも、自分自身の人生を大切にし、自立した心を育むことが求められます。

3.5. 喪失と受容、そして次なる出会い

推しが活動を休止したり、引退したり、あるいはコンテンツが終了したりすることは、ファンにとって大きな喪失体験となります。しかし、この喪失を乗り越える過程で、私たちは多くのことを学び、成長することができます。

喪失感と悲しみ: 推しとの別れは、まるで大切な人との別れのように、深い喪失感や悲しみをもたらします。時には、抑うつ状態に陥ることもあります。

グリーフケア: この喪失感を乗り越えるためには、適切なグリーフケアが必要です。悲しみを否定せず、友人や家族と共有したり、専門家のサポートを受けたりすることが有効です。

受容と新たな出会い: 喪失感を受け入れ、乗り越えることで、私たちは精神的に成長することができます。そして、この経験を通じて、新たな推しや新たな趣味との出会いが生まれることもあります。人生は常に変化し、新たな出会いが訪れることを学ぶのです。

4. 健全な押し活のための自己管理と心のケア

押し活が人生を豊かにする一方で、そのネガティブな側面を最小限に抑え、健全な形で継続するためには、適切な自己管理と心のケアが不可欠です。

4.1. バランスの取れた押し活の重要性

時間と金銭の管理: 押し活に費やす時間と金銭の上限をあらかじめ設定し、それを超えないように意識することが重要です。家計簿をつけたり、カレンダーに予定を書き込んだりすることで、客観的に状況を把握できます。

優先順位の明確化: 学業や仕事、家族、友人との時間、他の趣味など、押し活以外の生活も大切にすることが重要です。自分にとって何が大切なのか、優先順位を明確にすることで、バランスの取れた生活を送ることができます。

「推し疲れ」のサインに気づく: 押し活が負担になっていると感じた時、それは「推し疲れ」のサインかもしれません。無理をして活動を続けるのではなく、一時的に距離を置いたり、ペースを落としたりすることも必要です。

4.2. 人間関係における心のケア

適切な距離感の維持: ファン同士の人間関係において、過度に深入りせず、適切な距離感を保つことが重要です。SNSでの交流も、情報収集や共感の共有に留め、批判的な意見や誹謗中傷には耳を傾けないようにしましょう。

多様な価値観の尊重: ファンの中には様々な考え方や応援スタンスを持つ人がいます。自分の価値観を押し付けず、多様な意見を尊重する姿勢が大切です。

「同担拒否」との向き合い方: もし「同担拒否」の傾向がある場合は、その感情の背景にあるものを理解し、必要であれば専門家のサポートを検討することも有効です。

4.3. 精神的な健康の維持

現実との区別: 推しの世界と現実の世界を明確に区別し、推しに過度な期待を抱きすぎないことが重要です。推しはあくまで「推し」であり、私たちを支える存在ではあっても、私たちの人生の全てではありません。

自己肯定感の育成: 押し活以外にも、自分自身の強みや好きなことを見つけ、自己肯定感を育むことが大切です。推しに依存するのではなく、自分自身の力で幸せを見つけることができるようになることが、精神的な自立に繋がります。

休息とリフレッシュ: 押し活に疲れた時は、積極的に休息を取り、心身のリフレッシュを心がけましょう。趣味に没頭する、自然の中で過ごす、友人とおしゃべりするなど、自分に合った方法でストレスを解消することが大切です。

専門家への相談: もし押し活によって精神的な負担が大きくなり、日常生活に支障をきたすようになった場合は、迷わず心療内科やカウンセリングなど、専門家のサポートを検討しましょう。中原こころのクリニックでは四ノ宮医師が主体となり精神科専門医・心療内科医としてではネットでの出会いやトラブルを多くかかわってきました。そしてどの患者様も大変傷つかれていると実感しております

5. まとめ:押し活と人生の豊かな共存

押し活は、現代社会において多くの人々にとって、欠かせない存在となっています。推しは私たちに喜びや幸福感、生きがいを与え、新たな人間関係を築くきっかけとなり、困難な状況を乗り越えるための原動力となることもあります。その一方で、金銭的負担、時間的制約、人間関係の悩み、精神的疲労といったネガティブな側面も存在します。

しかし、これらの課題は、適切な自己管理と心のケアによって乗り越えることが可能です。バランスの取れた押し活を心がけ、時間や金銭の管理を徹底し、健全な人間関係を築くこと。そして、推しと自分自身の境界線を明確にし、自分自身の人生を大切にすることが、押し活をより豊かで持続可能なものにする鍵となります。

押し活は、私たちの人生に彩りを加え、心を豊かにする素晴らしい活動です。推しから得られる感動や喜びを糧に、私たち自身も成長し、より充実した人生を送ることができます。推しとの出会いが、あなたの人生に新たな光を灯し、心に深く温かい変化をもたらすことを願っています。

#中原こころのクリニック #武蔵小杉 #溝の口 #心療内科