精神科専門医が解説:ネット依存のサインと早期対応の重要性

■ ネット依存は「意志の弱さ」ではなく“脳の変化”

若者に限らず青年層から中高年層まで

「スマホが手放せない」「夜中までSNSを見続けてしまう」

といった相談が増えています。

精神科専門医の視点では、ネット依存は単なる“使いすぎ”ではありません。

脳の報酬系が過敏になり、やめたくてもやめられない状態が生じる医学的な依存症の一種です¹⁾。

特に、発達障害(ASD・ADHD)やうつ病、適応障害を抱える方は、

ストレス対処としてネットに没頭しやすく、依存に移行しやすいことが知られています²⁾。

■ 精神科専門医が見る「ネット依存のサイン」

● ① 使用時間がコントロールできない

「あと5分だけ」と思ってもやめられない。

これは依存症の典型的なサインです¹⁾。

新川崎や中野島、登戸周辺の学生では、休学に至るケースもあります。

● ② 日常生活に支障が出ている

•            朝起きられない

•            学校や仕事に遅刻する

•            食事や入浴を後回しにする

•            家族との会話が減る

生活リズムの乱れからうつ病や適応障害を併発する例も見られます。

● ③ ネットを取り上げられると強いイライラ

脳の報酬系がネット刺激に依存しているサインで、

「使えないと落ち着かない」「怒りっぽくなる」などの変化が起こります³⁾。

● ④ 現実よりネットを優先する

SNSの反応やゲームの進行が最優先になり、

•            宿題

•            仕事

•            家事

•            睡眠

が後回しになる。

元住吉や新綱島、新横浜方面の若年層では、

ネット依存と躁うつ病の併存が問題になることもあります。

● ⑤ 隠れて使う

深夜にこっそりスマホを使う、履歴を消すなどの行動は、依存が進行しているサインです。

■ ネット依存が起こりやすい背景(専門医の視点)

● 発達特性(ASD・ADHD)

•            興味の偏り

•            刺激を求めやすい

•            切り替えが苦手

これらが依存につながりやすい²⁾。

● ストレス・孤独

武蔵中原や武蔵小杉のような人口密集地域では、

「人が多いのに孤独を感じる」

という相談が多く、ネットに逃避しやすい傾向があります。

● 睡眠リズムの乱れ

夜間のスマホ使用は睡眠を妨げ、依存をさらに悪化させます。

■ 家族ができるサポート(専門医が推奨)

● ① 取り上げるのは逆効果

急にスマホを取り上げると、反発や不安が強まり、依存が悪化することがあります。

代わりに、

•            充電場所をリビングにする

•            夜間はWi-Fiを切る

•            使用時間を一緒に確認する

などの環境調整が有効です。

● ② 本人の困りごとを理解する

ネット依存の背景には、

•            不安

•            孤独

•            学校・職場のストレス

•            発達特性

などが隠れていることが多い。

● ③ 専門家に相談する

ネット依存は、早期介入で改善しやすいことが分かっています。

精神科専門医、精神保健福祉士、認知症サポート医など、

多職種で支えることで改善が早まることがあります。

■ まとめ

ネット依存は誰にでも起こり得る問題であり、

特に武蔵中原・武蔵小杉・溝の口エリアでは相談が増えています。

「使いすぎかな?」と思った段階で早めに相談することが大切です。

【引用文献】

1Young KS. Internet addiction: evaluation and treatment. BMJ.

2 American Psychiatric Association. DSM-5.

2 Ko CH et al. Brain correlates of internet addiction. Psychiatry Clin Neurosci.

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新しい環境に適応しようとするあなたへ

―精神医学・心理学の研究からわかる「心の持ちよう」―

1. 新しい環境に適応することは「脳にとって自然なストレス」である

まず強調したいのは、新しい環境に不安や疲労を感じるのは「正常な脳の反応」だということです。

脳科学の研究では、ストレス事象は前頭前野や扁桃体などのネットワークで認知され、急性ストレス下では脳機能が一時的に変化することが示されています。

岡本ら(2008)は、fMRI・MEG研究を通じて、ストレスは脳が「予測不能な状況」に直面したときに自然に生じる反応であり、前頭前野がその調整に重要な役割を果たすと報告しています 1)

つまり、

「慣れない」「疲れる」「緊張する」

という感覚は、あなたの脳が新しい環境に適応しようと働いている証拠です。

2. 人は「進化的に」環境変化に弱い

進化精神医学の観点からも、環境変化にストレスを感じやすいのは自然です。

髙野(2025)は、ヒトの精神機能は「進化適応環境(EEA)」に最適化されており、現代の急速な社会変化とのギャップが精神的負荷を生むと述べています 2)

•            人類は数十万年、同じ集団・同じ土地で暮らす生活に適応してきた

•            現代のように短期間で環境が変わる状況は、進化史的には「異常事態」

したがって、

新しい職場・学校・地域に慣れないのは、あなたの意志が弱いからではなく、脳の進化的特性によるものです。

3. ストレス反応には「個人差」がある

最新の研究では、ストレスに対する反応は人によって大きく異なることが示されています。

鈴木ら(2024)は、心理社会的ストレスを受けたマウスを行動特性で分類し、

•            社会性低下

•            アンヘドニア(喜びの喪失)

•            その両方

•            レジリエンス(症状が出ない)

という4タイプに分かれることを示しました 3)

これは人間にも当てはまり、

「ストレスに強い/弱い」は性格ではなく、脳回路の違いによる部分が大きい

ということを意味します。

だからこそ、

他人と比べる必要はありません。あなたのペースで適応すればよいのです。

4. 適応を助ける「心の持ちよう」

ここからは、研究に基づく「心の持ちよう」を具体的に示します。

4-1. ①「予測可能性」を増やす

ストレス研究では、予測可能性がストレス反応を軽減することが示されています。

岡本ら(2008)は、予測がストレス入力を抑制する可能性を指摘しています 。

実践例

•            1日の流れを前日にざっくり書く

•            新しい場所の地図やルールを事前に確認する

•            「最初の10分でやること」を決めておく

「何が起こるかわからない」状態を減らすだけで、脳は安心します。

4-2. ②「小さな成功体験」を積む

新しい環境では、脳は常に情報処理に負荷をかけています。

そのため、小さな成功体験が自己効力感を回復させることが重要です。

例:

•            初対面の人に挨拶できた

•            仕事の手順を1つ覚えた

•            通勤ルートがスムーズに行けた

これらはすべて「適応の証拠」です。

4-3. ③「社会的つながり」を少しずつ作る

思春期研究ですが、前田ら(2025)は、社会的感受性は適応に大きく影響し、良好な人間関係がレジリエンスを高めると述べています 4)

大人でも同じで、

人とのつながりはストレス耐性を高める最強の要因です。

ただし、無理に広げる必要はありません。

「1人、気の合う人がいれば十分」です。

4-4. ④「感情を否定しない」

南極越冬隊の研究(鳴岩ら)では、閉鎖環境でのストレスは、

•            肯定的感情 → 建設的な対処

•            否定的感情 → 非建設的な対処

につながることが示されています 5)

重要なのは、

不安や疲れを「悪いもの」と決めつけないこと。

感情は「環境に適応しようとする脳のシグナル」であり、

あなたを守るための反応です。

4-5. ⑤「自分のペースで慣れる」

ストレス反応の個人差研究(鈴木ら)でも示されたように、

適応速度は人によって違うのが当たり前です。

•            1週間で慣れる人

•            1か月かかる人

•            半年かけてゆっくり慣れる人

どれも正常です。

5. 適応を妨げる「落とし穴」

5-1. 完璧主義

「早く慣れなければ」「迷惑をかけてはいけない」

という思考は、前頭前野に過剰な負荷をかけます。

5-2. 過度な自己比較

他人の適応速度は参考になりません。

脳回路が違うからです。

5-3. 休息不足

脳は新しい環境に適応する際、通常より多くのエネルギーを消費します。

睡眠は必須です。

6. 研究から導かれる「適応の本質」

ここまでの研究を総合すると、

新しい環境への適応とは、脳が「予測不能な世界」を「予測可能な世界」に書き換えるプロセス

だと言えます。

そのためには、

•            情報を整理し

•            小さな成功を積み

•            人とのつながりを作り

•            感情を否定せず

•            自分のペースで進む

という積み重ねが必要です。

7. 最後に ― あなたへ

あなたが今感じている不安や疲れは、

「弱さ」ではなく「適応の途中経過」です。

脳は必ず変化に慣れます。

そのスピードは人それぞれですが、

あなたの脳も確実に前へ進んでいます。

どうか、

今日できた小さな一歩を大切にしてください。

それが、未来のあなたを支える大きな力になります。川崎市、中原こころのクリニックのクリニックでは精神科専門医が主治医制のもと精神科訪問診療ならびに外来通院治療を行っております。土曜日は終日外来にて治療を行い、平日は訪問診療と外来通院が治療場面です

思春期児童の発達障害や不登校相談からご高齢の認知症、青年期の方まで幅広い世代の方々にご利用いただいております。アクセスは武蔵小杉や溝ノ口から車や電車で5分程度。

武蔵中原徒歩1分、武蔵新城からは徒歩20分。平間や新川崎、登戸の患者様も増えております。訪問診療の兼ね合いで予約枠には限りがございますがお気軽のご相談ください

1. 岡本安昌、小野田慶一ら、ストレス反応の神経生理学的基盤、日本薬理、131、5-10、2008

    2.高野等、進化精神医学の諸相―「進化適応環境」と「自己家畜化」の視点から―

      精神神経学雑誌 127: 89-96, 2025

      3.鈴木孝禎 ResOU 心理社会ストレスによる症状発現の個体差が生じる脳内メカニズムを解明 2024-1-16

      4.前田友吾、松田哲也 思春期の社会環境への適応と前向き力 認知学 第32巻第3号(2025)pp382-389

      5.鳴岩 伸生、桑原 知子ら長期閉鎖環境への適応および帰還後再適応に対する心理的サポート方法の開発 科研費情報 挑戦的萌芽研究 京都光華女子大学2012-04-01-2015-03-31

      #休職 #診断書 #適応障害 #高津区 #高津 #向河原 #うつ病

      季節が変わって数週間後に訪れる“心の揺らぎ”とその整え方

      ──武蔵小杉・溝の口で暮らすあなたへ、精神科医からのアドバイス──

      ■ はじめに

      季節が変わるとき、多くの人が「なんとなく調子が出ない」「気持ちが落ち着かない」と感じます。 しかし、実際に心身の不調が表れやすいのは、季節が変わった“直後”ではなく、数週間経ってからです。

      中原こころのクリニックでは以下の点を環境因子と考えています

      • 体内時計の調整
      • 自律神経の変動
      • 気圧・気温差のストレス
      • 生活リズムの変化 これらが“遅れて”心に影響することが示されています。

      武蔵小杉・溝の口エリアは、都市的な利便性と住宅地の落ち着きが混在し、生活リズムが人によって大きく異なる地域です。 そのため、季節変化の影響が出やすい環境でもあります。

      ここでは、季節変化から数週間後の“今”起こりやすい心の変化を科学的に整理し、地域特性に合わせた対策をまとめます。

      ■ 1. 季節変化が「数週間後」に心へ影響する理由

      ● ① 体内時計(サーカディアンリズム)の“遅れ反応”

      季節が変わると日照時間が変化しますが、体内時計はすぐには順応しません。 研究では、体内時計が新しい季節に適応するまで2〜6週間かかるとされています。

      このズレが続くと、

      • 朝起きづらい
      • 集中力の低下
      • 気分の落ち込み
      • 食欲の変化
      • 疲労感の増加 といった症状が出やすくなります。

      武蔵小杉・溝の口は高層マンションが多く、日照量が季節や住戸位置によって大きく変わるため、体内時計の乱れが起きやすい地域です。

      ● ② 自律神経の調整に時間がかかる

      季節の変わり目は、気温差・気圧差が大きく、自律神経が過剰に働きます。 研究では、気圧の変化が交感神経を刺激し、不安・頭痛・倦怠感を引き起こすことが示されています。

      武蔵小杉・溝の口は多摩川に近く、気圧変動の影響を受けやすい地形です。 そのため、季節変化後しばらくしてから不調が出る人が多いのです。

      ● ③ 新生活の疲れが“蓄積”して現れる

      春は、

      • 異動
      • 新学期
      • 引っ越し
      • 新しい人間関係 など、生活が変わりやすい時期です。

      最初は気が張っていても、数週間経つと疲れが一気に出ることがあります。 特に武蔵小杉は転勤族が多く、溝の口は子育て世帯が多い地域で、生活変化の影響を受けやすい傾向があります。

      ■ 2. 武蔵小杉・溝の口エリア特有の生活環境が心に与える影響

      ● ① 都心への通勤ストレス

      武蔵小杉は首都圏屈指の“乗り換えの要所”であり、

      • 東横線
      • 目黒線
      • 南武線
      • 横須賀線
      • 湘南新宿ライン など、多くの路線が集中しています。

      朝の混雑は全国でもトップクラスで、研究でも通勤ストレスは気分障害のリスクを高めることが示されています。

      溝の口も田園都市線の混雑が有名で、ストレスが蓄積しやすい環境です。

      ● ② 高層マンションの多さと「光環境」の影響

      武蔵小杉はタワーマンションが多く、

      • 朝日が入りにくい
      • 夕方まで日が差し込む
      • 風が強い など、住戸によって光環境が大きく異なります。

      光環境は体内時計に直結するため、メンタルに影響しやすい要素です。

      ● ③ 商業施設の多さによる“刺激過多”

      武蔵小杉のグランツリー、ららテラス、東急スクエア、溝の口のノクティなど、 人が多く、刺激が多い環境は、疲労感を増幅させることがあります。

      ● ④ 子育て世帯の多さによる生活リズムの乱れ

      溝の口・武蔵小杉は子育て世帯が多く、

      • 夜泣き
      • 保育園送迎
      • 仕事との両立 など、生活リズムが乱れやすい環境です。

      研究では、睡眠不足は気分の落ち込みと強く関連しています。

      ■ 3. 季節変化後の“今”からできる心の整え方

      ここからは、精神医学の研究をベースに、地域特性に合わせた実践方法を紹介します。

      ■ 3-1. 体内時計を整える

      ● ① 朝の「光」を意識的に浴びる

      研究では、朝の光を10〜20分浴びるだけで体内時計が整うことが示されています。

      武蔵小杉・溝の口で実践しやすい方法:

      • ベランダに出て深呼吸
      • グランツリー周辺を5分だけ歩く
      • 多摩川沿いを軽く散歩
      • 子どもの送りのついでに日光を浴びる

      高層階で朝日が入りにくい場合は、

      • 朝のリビング照明を明るくする
      • 光目覚ましを使う なども効果的です。

      ● ② 就寝前のスマホ光を減らす

      ブルーライトは体内時計を遅らせます。

      • ナイトモード
      • 画面の明るさを最低に
      • 寝る30分前はスマホを見ない

      これだけで睡眠の質が改善します。

      ■ 3-2. 自律神経を整える

      ● ① 呼吸法(エビデンスあり)

      精神医学の研究では、ゆっくりとした呼吸が副交感神経を優位にし、不安を軽減することが示されています。

      おすすめは「4-6呼吸」

      • 4秒吸う
      • 6秒吐く これを5回。

      溝の口や登戸周辺からいらっしゃる田園都市線沿線の方や東横線武蔵小杉や新丸子、元住吉沿線の方にも車内でもできまお勧め。

      ● ② ぬるめの入浴

      40℃前後の湯に10〜15分浸かると、副交感神経が働きやすくなります。 マンションの浴槽でも十分効果があります。武蔵新城にある銭湯(千歳温泉)や武蔵小杉の銭湯(今井湯)もゆっくりとお風呂を整容の整えだけでなくリラックスの場として使えることでしょう

      ■ 3-3. 気分の落ち込みを防ぐ行動

      ● ① 「小さな達成」を積み重ねる

      研究では、達成感が脳の報酬系を刺激し、気分を安定させることが示されています。

      例:

      • 朝、ベッドを整える
      • 5分だけ片付ける
      • 1駅分歩く(武蔵小杉〜向河原、溝の口〜高津など)

      ● ② 人とのつながりを少しだけ増やす

      孤立はメンタル不調の大きなリスクです。 とはいえ、無理に交流を増やす必要はありません。

      • カフェで店員さんに「ありがとう」と言う
      • 同僚に「お疲れさま」と声をかける
      • 家族に今日の出来事を一言だけ話す

      こうした“軽い接触”でも効果があります。

      ■ 4. 武蔵小杉・溝の口で実践しやすいメンタルケア

      ● ① 多摩川沿いの散歩

      自然環境はストレス軽減に効果があると多くの研究で示されています。 多摩川沿いは、季節の変化を感じながら歩ける絶好の場所です。

      ● ② 商業施設での「短時間の気分転換」

      • グランツリーの屋上庭園
      • ノクティの休憩スペース
      • カフェで10分だけ休む

      屋内で気軽に気分転換できるのは、この地域の強みです。

      ● ③ カフェでの“ひとり時間”

      武蔵小杉・溝の口はカフェが多く、

      • 朝にコーヒーを飲む
      • 仕事帰りに10分だけ寄る など、短時間の休息が取りやすい。

      研究では、「自分だけの時間」を持つことがストレス耐性を高めるとされています。

      ■ 5. それでも調子が戻らないとき

      季節変化による不調は、通常は数週間〜1ヶ月ほどで落ち着きます。 しかし、以下の状態が続く場合は、専門家に相談することをおすすめします。

      • 朝起きられない日が続く
      • 気分の落ち込みが2週間以上続く
      • 仕事や家事が手につかない
      • 食欲が極端に変化した
      • 不安が強く、眠れない

      武蔵小杉・溝の口エリアにはメンタルクリニックも多く、相談しやすい環境が整っています。

      ■ おわりに

      季節が変わって少し時間が経った今は、心の不調が表れやすい時期です。 しかし、これはあなたが弱いからではなく、人間の身体と脳の仕組みとして自然な反応です。

      武蔵小杉・溝の口という地域の特性を踏まえながら、

      • 睡眠
      • 呼吸
      • 小さな達成
      • つながり
      • 自然や街の環境

      これらを少しずつ取り入れることで、心は確実に整っていきます。

      あなたの生活が、季節とともに穏やかに調和していくことを願っています。中原こころのクリニックでは精神科医専門医が主治医性のもと外来通院治療と精神科訪問診療を行っております

      1. 花粉症が精神面に影響する「医学的メカニズム」についてお伝えいたします

      花粉症は、花粉が体内に侵入することで免疫系が反応し、炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-αなど)が放出されます。 これらは血液を介して脳に作用し、以下のような“病気行動(sickness behavior)”を引き起こします。

      • 強い倦怠感
      • 気分の落ち込み
      • 不安感
      • 意欲低下

      2023年の Rodrigues らの研究では、アレルギー性鼻炎患者は対照群より不安・抑うつスコアが有意に高いことが示されました。 特に症状が重いほど、心理的負担が増すことも明らかです。

      これは、花粉症が「鼻水の病気」ではなく、脳の神経伝達物質(セロトニン・ドーパミン)に影響する全身性疾患であることを示しています。

      ② 睡眠の質の低下がメンタルを悪化させる

      花粉症の患者は、以下の理由で睡眠が浅くなりがちです。

      • 鼻づまりによる口呼吸
      • 目のかゆみ
      • 夜間の中途覚醒
      • 早朝覚醒

      睡眠不足は、精神科領域では抑うつ・不安・イライラ・集中力低下の主要因です。 実際、精神科外来では「花粉症の時期だけ不眠が悪化する」という患者が毎年増えます。

      睡眠の質が落ちると、脳の感情調整機能が低下し、メンタル不調が顕在化しやすくなります。

      ③ 抗ヒスタミン薬の副作用(眠気・だるさ・認知機能低下)

      花粉症治療薬の中には、眠気や倦怠感を引き起こすものがあります。

      • 眠気
      • 頭がぼんやりする
      • 判断力・集中力の低下

      これらは仕事のパフォーマンス低下につながり、 「自分はダメだ」「やる気が出ない」 といった二次的な抑うつ感を生むことがあります。

      2026年は飛散量が多く、薬の使用量が増えた患者も多いため、副作用によるメンタル不調が例年以上に目立ちました。

      2. 春特有の「環境ストレス」がメンタル悪化に拍車をかける

      春は、以下のように環境変化が重なる季節です。

      • 異動・転職・新年度の開始
      • 新しい人間関係
      • 寒暖差による自律神経の乱れ

      これらのストレスに、花粉症による身体的負荷が加わることで、 「春うつ」や「季節性感情障害」に近い状態に陥る人が増えます。

      特に2026年は、花粉飛散量が多かったため、例年以上に「春のメンタル不調」が顕著でした。

      3. 花粉症と自殺リスクの関連 ― デンマークの大規模研究

      花粉症とメンタルの関係を語る上で重要なのが、デンマークの大規模疫学研究(Qin ら, 2013)です。

      この研究では、 空気中の花粉濃度が上昇すると、自殺者数が微増する という関連が示されました。

      もちろん、花粉が直接自殺を引き起こすわけではありません。 しかし、

      • 気分の落ち込み
      • 不安の増大
      • 睡眠障害
      • 社会的ストレス

      が重なることで、脆弱性の高い人のリスクが上がる可能性が示唆されています。

      精神科医としては、 「春先に毎年気分が落ちる人」には特に注意が必要 と考えます。

      4. 2026年の花粉症患者に見られた特徴(臨床的観察)

      川崎市・関東圏の精神科外来では、2026年に以下の傾向が見られました。

      ● 例年より強い倦怠感

      炎症反応が強く、日中の眠気・だるさを訴える患者が増加。

      ● 不安症状の悪化

      「息苦しさ」「動悸」「集中できない」などの訴えが増えた。

      ● 抑うつ症状の顕在化

      もともと軽度の抑うつ傾向があった人が、花粉症を契機に悪化。

      ● 仕事のパフォーマンス低下

      抗ヒスタミン薬の副作用や睡眠不足が影響。

      ● 外出回避による社会的孤立

      花粉を避けるために外出を控え、気分がさらに落ち込むケースも。

      5. 花粉症がメンタルに与える影響を軽減するための対策

      ① 炎症を抑える(耳鼻科での治療最適化)

      • ステロイド点鼻薬
      • 第二世代抗ヒスタミン薬
      • 舌下免疫療法(長期的対策)

      炎症が減ると、メンタル症状も改善しやすくなります。

      ② 睡眠を最優先にする

      • 寝る前のスマホを控える
      • 鼻づまり対策(点鼻薬・鼻うがい)
      • 寝室の加湿
      • 花粉の少ない早朝に軽い散歩

      睡眠改善は、精神科的には最も効果が大きい介入です。

      ③ 薬の副作用を最小限にする

      • 眠気の少ない薬への変更
      • 服薬タイミングの調整
      • 医師への相談

      副作用によるメンタル悪化は、調整で大きく改善します。

      ④ 春の環境ストレスを軽減する

      • 予定を詰め込みすぎない
      • 「8割稼働」を意識する
      • 気分の記録をつける

      春は心身の負荷が高い季節であることを前提に行動することが大切です。

      6. 受診の目安 ― こんなときは精神科へ

      以下の状態が2週間以上続く場合は、花粉症に伴う抑うつ・不安障害の可能性があります。

      • 気分の落ち込み
      • 不安で仕事に集中できない
      • 眠れない
      • 何をしても楽しめない
      • 自己否定感が強い
      • 動悸・息苦しさ

      花粉症とメンタル不調は併存しやすく、早期介入で改善しやすいのが特徴です。

      7. まとめ ― 花粉症は「心の病気」を引き起こす

      2026年の花粉症は飛散量が多く、例年以上にメンタル不調を訴える人が増えました。 最新研究からも、

      • 炎症反応が脳に影響する
      • 睡眠障害がメンタルを悪化させる
      • 薬の副作用が心理状態に影響する
      • 花粉濃度と自殺リスクに関連がある可能性

      など、花粉症が精神面に大きな影響を与えることが明らかになっています。

      「春になると毎年つらい」 それはあなたの弱さではなく、身体と脳の反応です。

      つらさを我慢する必要はありません。 必要であれば、精神科・心療内科に相談することで、春をより穏やかに過ごすことができます。特に今年、中原こころのクリニックの外来や訪問診療のなかでもご対応させていただくことが多かった印象で生活への支障が川崎市民への大きさを実感致しました。薬物療法の基本は抗アレルギー薬や抗ロイコトリエン拮抗薬ではありますが、舌下免疫療法も治療費を加味しながら耳鼻科でご相談することも今後多くなっていくと思われます