睡眠習慣と睡眠相交代症候群

暑い日々ですね。オリンピックもありついつい、生活習慣が不規則になりがちになってしまいがちです。私はスポーツ観戦が好きなのですが、欧米が中心となるスポールイベントでは睡眠習慣が乱れがちになります。また、長い休暇で夜更かしをして遅くまで寝ている習慣がつくと 、仕事を再開するとき朝なかなか目が覚めずつらく感じる 。これを我慢すると、通常は 2-3 日のうちに早くに寝つけるようになり、必要とされる時刻に起きられるようになるが、睡眠相交代症候群(以下DSPS)にはそれができない。概日リズム睡眠障害の代表的な一群で、患者は 1) 日中の行動や心理状態とかかわりなく朝方まで入眠できない、2)いったん入眠すると 的安定した睡眠が得られ、遅い時刻まで・起きられないが目覚めた時に不快感はない、 3 )長期間にわたり睡眠改善の努力をしてもうまくいかない、の 3つ の特徴がある 。努力して無理に起床しでも、午前中の間はぼんやりとした状態が続き、 1- 2日で元の夜更かし、朝寝坊の生活に戻ってしまう 。睡眠時間帯の遅れのために定刻に出勤 ・登校出来ず、社会生 活上の障害が出現する 。思春期から青年期に発症することが多く、夏休みなどの長い休暇中の昼夜逆転生活、受験勉強などが 発症の誘因となる 。臨床的にみて、最低体温出現時刻やメラトニン分泌リズムが健常者に 比べて遅れていることがわかってきた。この背景には、睡眠や概日リズムに関連したなんらかの迫伝的素因があることが最近わかってきている1)

睡眠リズムの改善にメラトニン製剤はよく使われてきました。ベンゾジアゼピン系睡眠薬からの置換による高齢の不眠症患者において、メラトニン置換療法は、睡眠潜時を有意に減少させ、および/または睡眠効率を向上させ、睡眠発症後の覚醒時間を減少させ、さらにメラトニン補充療法は慢性的な使用者においてベンゾジアゼピンの中止を促進した。これらのデータは、メラトニンのリズム障害と夜間の睡眠促進または維持の困難との関連を示している。特定のメラトニン製剤は、概日リズムに関連した睡眠障害および加齢に関連した不眠症の治療に有用である可能性が高い2)ただメラトニン製剤は入眠作用が強いお薬とはいえず臨床で使用し睡眠習慣がなかなか改善しないことも実情でありました。なにか、環境マネージメントに併行して対応できないかと思いあぐねていたところ新しい論文がありましたのでご紹介致します。

Low dose of aripiprazole advanced sleep rhythm and reduced nocturnal sleep time in the patients with delayed sleep phase syndrome: an open-labeled clinical observation

低用量のアリピプラゾールは、睡眠相後退症候群の患者の睡眠リズムを促進し、夜間の睡眠時間を短縮しました:オープンラベルの臨床観察

Objectives: Delayed sleep phase syndrome (DSPS) is a chronic dysfunction of circadian rhythm of the subject that impairs functioning in social, occupational, or other spheres. High rate of depression is found among DSPS patients. Aripiprazole (APZ), a second-generation antipsychotic, is effective in treatment of depression as well as schizophrenia. Recently, few case reports show the effectiveness of APZ in treating DSPS and non-24-hour sleep–wake rhythm disorder. Therefore, we tried to treat DSPS with depression using APZ.

目的:睡眠相後退症候群(DSPS)は、社会的、職業的、またはその他の分野での機能を損なう、被験者の概日リズムの慢性的な機能障害です。 DSPS患者の間で高いうつ病率が見られます。 第二世代の抗精神病薬であるアリピプラゾール(APZ)は、うつ病や統合失調症の治療に効果的です。 最近、DSPSおよび24時間睡眠覚醒以外のリズム障害の治療におけるAPZの有効性を示す症例報告はほとんどありません。 したがって、APZを使用してうつ病のDSPSを治療しようとしました。
Methods: Twelve subjects (including four women) aged 19–64 years were included. The subjects were prescribed initially 0.5–3 mg of APZ once a day with subsequent dose adjustments.

方法:19〜64歳の12人の被験者(4人の女性を含む)が含まれました。 被験者は最初に0.5〜3 mgのAPZを1日1回処方され、その後用量が調整されました。


Results: Sleep onset, midpoint of sleep, and sleep offset were significantly advanced by 1.1, 1.8, and 2.5 hours, respectively. Unexpectedly, sleep duration became significantly shorter by 1.3 hours after treatment. Their depressive moods showed an unremarkable change.

結果:睡眠開始、睡眠の中間点、および睡眠オフセットは、それぞれ1.1時間、1.8時間、および2.5時間大幅に進んだ。 予期せぬことに、睡眠時間は治療後1.3時間で大幅に短くなりました。 彼らの憂鬱な気分は目立たない変化を示しました。


Conclusion: Low dose of APZ advanced the sleep rhythm and reduced nocturnal sleep time in the subjects with DSPS. Since it is not easy for physicians to treat prolonged sleep duration often associated with DSPS, this medication would become a new therapeutic option for these patients

結論:低用量のAPZは、DSPSの被験者の睡眠リズムを促進し、夜間の睡眠時間を短縮しました。 医師がDSPSに関連することが多い睡眠時間の延長を治療することは容易ではないため、この薬はこれらの患者にとって新しい治療選択肢となるでしょう

アリピプラゾールは双極性感情障害・統合失調症に使用されるお薬ですので、主作用副作用を説明の上で当院では適応外処方にて希望される患者様に対応したいと考えております。またお薬以外での治療では入浴及び対内温度も睡眠への影響は大きくあります。人間の体は睡眠時に体温が低下し、眠りが深くなるほど深部体温(体の内部の体温)が下がっていきます。入眠前からだんだんと下がり始め、体が眠る準備を始めるのです。寒すぎても眠れませんが、体温が上がった状態では眠りに入りにくくなります。

お風呂に入るタイミングも入眠に関係しています。お風呂に入って体が温まると末梢血管の拡張によって手足の表面から発散させる熱が増え、体温が下がりやすくなります。一方で、熱いお湯につかると深部体温が高くなりすぎて入眠準備がしにくくなるので、入眠前はぬるめのお湯につかるのがいいとのことです3)湯冷めで風邪をひかないようにお気をつけてください

参考文献

1)大川|匡子 時間生物学 Vo1.l2,9-12 No.2 (2006)

2)Biological signals and receptors 1999 Jan-Apr Vol. 8 issue(1-2)

3) Y.Omori et al: Nweuropsychiatric Disease and Treatment 2018,12:1281-1286 18 May 2018

4 )睡眠と体温 テルモ体温研究所より抜粋

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