選挙のように国の政治が大きく動く局面では、社会全体が「集団としての緊張状態」に入り、個人の心理にも多層的な変化が生じる。精神科医の視点で整理すると、反応は大きく三つのレベル
①生理的反応
②認知・感情の変化
③行動・対人関係の変化
以下では、それぞれの変化と、専門医が実際に行う対応をモデルにした「専門医的なセルフケア方法」を体系的にまとめる。
生理的レベルの変化:ストレス反応としての政治イベント
選挙は、個人の生活に直接影響する可能性があるため、脳は「重要な環境変化」として処理する。これにより、以下のような生理的反応が起こりやすい。
- 交感神経の亢進 — 心拍数上昇、浅い呼吸、落ち着かない感覚
- 睡眠の質の低下 — 就寝前のニュース閲覧やSNSでの議論が脳を覚醒させる
- 慢性的な緊張 — 結果が出るまでの不確実性がストレスホルモンを増加させる
- 身体症状の増悪 — 頭痛、胃腸症状、肩こりなどのストレス関連症状
精神科医は、これらを「正常なストレス反応」と位置づけつつ、過度に強い場合は不安障害や気分障害の増悪として評価する。
専門医的セルフケア - 情報摂取の時間制限:就寝2時間前のニュース・SNSを避ける
- 呼吸法:4秒吸う→6秒吐くを5分
- 身体感覚のモニタリング:肩の緊張、呼吸の浅さを意識的に緩める
- 睡眠衛生の徹底:光刺激を減らし、入眠儀式を固定する
認知・感情レベルの変化:不確実性がもたらす心理的ゆらぎ
政治イベントは「結果が読めない」「自分ではコントロールできない」という特徴があり、これが心理的負荷を増大させる。
よく見られる認知の変化
- 将来予測の悲観化
- 白黒思考(極端な二分法)
- 選択的注意(不安を強める情報ばかり目に入る)
- 確証バイアス(自分の意見を補強する情報だけを集める)
感情の変化 - 不安の増大
- 怒りの増幅(SNSで特に顕著)
- 無力感・虚無感
- 期待と失望の振れ幅の大きさ
精神科医は、これらを「認知の偏り」「情動調整の困難」として評価し、必要に応じて認知行動療法的アプローチを用いる。
専門医的セルフケア - 認知の偏りを言語化する
- 「本当に100%悪い未来しかないのか?」
- 「自分が見ていない情報はないか?」
- 感情と事実を分ける練習
- 感情=主観
- 事実=検証可能な情報
- SNSの“感情感染”を避ける
- 怒りの投稿は脳の扁桃体を刺激し、連鎖的に不安を増幅させる
- “いま自分がコントロールできる範囲”を明確化する
- 投票
- 情報の選び方
- 自分の生活習慣
行動・対人関係レベルの変化:社会的緊張の高まり
政治的緊張は、対人関係にも影響を与える。
よく見られる行動変化
- SNSでの議論・対立の増加
- 家族・友人との政治的衝突
- ニュースの過剰チェック
- 仕事や学業への集中力低下
精神科医は、これらを「ストレス行動」「対人関係の摩擦」として評価し、必要に応じて対人関係療法(IPT)やストレスマネジメントを行う。
専門医的セルフケア - 政治の話題を避ける境界線を設定する
- 「今日は政治の話題は控えたい」
- SNSの“議論の沼”に入らないルールを決める
- 返信は1回まで
- 感情的な投稿には反応しない
- 生活リズムの維持
- ストレス時ほど基本的な生活習慣が崩れやすい
- 集中力の回復のための“注意の切り替え”
- 5分の散歩
- 目を閉じて呼吸を整える
選挙後に起こりやすい心理反応とケア
選挙後には、結果に応じて異なる心理反応が生じる。
結果に満足した場合
- 安堵
- 高揚感
- 他者への説得欲求の増加(対立を生みやすい)
結果に不満がある場合 - 失望
- 怒り
- 無力感
- 将来への不安
精神科医は、これらを「正常な情動反応」としつつ、長期化する場合は抑うつや不安障害の兆候として評価する。
専門医的セルフケア - 結果への感情を“事実”と切り離して整理する
- 政治的議論から距離を置く時間を意図的に作る
- 生活の可視化(ルーティンの再構築)
- 不安が強い場合は身体感覚に戻る練習
- 足裏の感覚
- 呼吸のリズム
川崎市、武蔵小杉より近位である中原こころのクリニックにて精神科専門医医が実際に行う介入モデルをセルフケアに応用する
精神科医が政治イベントに関連したストレスを扱う際、以下のような枠組みを用いる。これを個人向けに応用すると、専門的なセルフケアになる。
- アセスメント(評価)
- どのレベルで負荷がかかっているか
- 生理
- 認知
- 感情
- 行動
- 対人関係
- 生活機能(睡眠・食事・仕事)がどの程度影響を受けているか
- 心理教育
- ストレス反応の仕組み
- SNSの影響
- 認知の偏りのパターン
- 認知行動療法的アプローチ
- 自動思考の整理
- 認知の再評価
- 行動活性化
- ストレスマネジメント
- 呼吸法
- マインドフルネス
- 生活リズムの安定化
- 対人関係調整
- 境界線の設定
- 衝突の回避
- 支援者とのつながりの維持
最後に:政治イベントは「心の地震」
選挙は、社会全体の価値観が揺れる「心の地震」のようなもの。
揺れそのものは自然な反応であり、問題は「揺れたあとにどう立て直すか」。
精神科医的な視点では、
- 生理
- 認知
- 感情
- 行動
- 対人関係
の5つの軸を整えることが、心の安定を取り戻す鍵になる。
分析的に物事を理解しようとする姿勢は、こうした心理的揺れを整理するうえで非常に有効。必要であれば、特定の状況(例:SNSでの議論疲れ、家族との政治的対立、不安の強まりなど)に合わせた個別の対処法もさらに深掘りできます。ただSNSには依存し過ぎないようにしましょう
