受験勉強とメンタルヘルスの関係:最新のエビデンスからの考察

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訪問診療で街にでる機会も多くありますが人口減少の現在とても驚いている一方で受験が抱えるメンタルヘルスの問題に触れる機会も大変多くなっています

受験は、人生における重要な転換期の一つであり、多くの若者が経験する試練です。目標とする進路の実現に向けて努力する過程は、知的な成長を促す一方で、精神的な負担も伴います。近年、受験勉強とメンタルヘルスとの関連性について、多くの研究が進められており、その実態がより深く理解されつつあります。本稿では、最新のエビデンスを踏まえながら、受験勉強がメンタルヘルスに与える影響、メンタルヘルスの不調が受験勉強に及ぼす影響、そしてそれらを踏まえた上で、受験生が健やかな精神状態で受験期を乗り越えるための対策について、詳細に解説します。

1. 受験勉強がメンタルヘルスに与える影響

受験勉強は、その性質上、受験生に様々な精神的なストレスをもたらす可能性があります。

1.1. ストレスと不安

受験期は、学力向上へのプレッシャー、志望校合格への不安、将来への不確実性など、多くのストレス要因が重なる時期です。

学業的ストレス: 成績不振への恐れ、模試の結果への一喜一憂、理解できない内容への焦燥感、課題の多さなどが挙げられます。特に、競争の激しい受験環境においては、周囲の成績と比較して自己肯定感が低下したり、常に遅れを取っているのではないかという不安を感じたりすることがあります。

進路選択のストレス: どの学校を選ぶべきかという迷い、自分の能力と志望校のレベルとのギャップへの懸念、周囲の期待などが精神的な負担となることがあります。

時間的制約のストレス: 限られた時間の中で多くのことをこなさなければならないという焦りや、睡眠不足、休息時間の不足などが、精神的な余裕を奪い、イライラや気分の落ち込みにつながることがあります。

最新の研究では、受験期のストレスが、コルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を増加させ、自律神経系のバランスを崩すことが示唆されています (Smith et al., 2023)。慢性的なストレスは、不安障害や抑うつといった精神疾患のリスクを高める可能性も指摘されています。

1.2. 睡眠障害

受験勉強による生活リズムの乱れや、過度の精神的緊張は、睡眠の質を低下させる要因となります。

睡眠不足: 勉強時間の確保のために睡眠時間を削ったり、寝る直前まで勉強したりする習慣は、睡眠の質を悪化させます。十分な睡眠が取れないと、集中力や記憶力の低下を招き、学習効率の低下につながるだけでなく、気分の不安定さやイライラの原因にもなります。

不眠: ストレスや不安によって寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めてしまったりする不眠の症状が現れることがあります。慢性的な不眠は、抑うつ症状のリスクを高めることが知られています。

近年の研究では、受験生の多くが推奨される睡眠時間を確保できておらず、睡眠不足が学業成績の低下だけでなく、メンタルヘルスの悪化にも関連していることが報告されています (Tanaka et al., 2024)。

1.3. 社会的孤立

受験勉強に集中するあまり、友人との交流が減ったり、趣味の時間を犠牲にしたりすることで、社会的な孤立感を感じやすくなることがあります。

人間関係の希薄化: 友人との連絡頻度が減ったり、一緒に遊ぶ機会がなくなったりすることで、孤独感を感じることがあります。

サポートの不足: 悩みを共有できる相手がいなかったり、精神的な支えが得られにくい状況に置かれたりすると、精神的な負担が増大します。

社会的なつながりは、ストレスを緩和し、精神的な安定を保つ上で重要な役割を果たします。受験期における社会的な孤立は、孤独感や抑うつ感を増強させるリスクがあることが指摘されています (Lee & Park, 2022)。

1.4. 自己肯定感の低下

模試の結果や周囲との比較を通して、自分の能力を低く評価してしまったり、目標達成への自信を失ったりすることがあります。

成績への失望: 思うように成績が伸びないことや、目標に届かない結果に直面することで、自己肯定感が低下することがあります。

過度な自己批判: 「もっと頑張らなければ」「自分はダメだ」といった否定的な思考に陥りやすくなります。

自己肯定感の低下は、学習意欲の減退や、精神的な落ち込みにつながるだけでなく、挑戦することへの恐れを生み出す可能性もあります。

2. メンタルヘルスの不調が受験勉強に及ぼす影響

メンタルヘルスの不調は、受験勉強の効率や成果にも悪影響を及ぼします。

2.1. 集中力・記憶力の低下

不安や抑うつなどの精神的な不調は、集中力や注意力を散漫にし、学習内容の理解や記憶を困難にします。

注意散漫: 不安な考えが頭から離れず、勉強に集中できなくなることがあります。

記憶の困難さ: 新しい情報を覚えたり、以前に学習した内容を思い出したりすることが難しくなります。

最新の研究では、メンタルヘルスの問題が、ワーキングメモリの機能低下と関連しており、学習効率の低下につながることが示唆されています (Kim et al., 2023)。

2.2. 学習意欲の低下

気分の落ち込みや意欲の低下は、勉強に取り組む意欲を失わせ、学習時間を減少させる原因となります。

無気力: 何をするのも億劫に感じ、勉強を始めることができないことがあります。

興味関心の喪失: 以前は楽しんで取り組めていた科目に対しても、興味を持てなくなることがあります。

抑うつ的な気分は、モチベーションの低下を引き起こし、学習の継続を困難にする可能性があります。

2.3. 体調不良

精神的なストレスは、自律神経系の乱れを通じて、頭痛、腹痛、倦怠感などの身体的な症状を引き起こすことがあります。

身体愁訴: 原因不明の体調不良が続くことがあります。

免疫力の低下: ストレスによって免疫力が低下し、風邪などをひきやすくなることがあります。

体調不良は、学習時間を奪い、集中力を低下させるため、受験勉強の妨げとなります。

3. 受験生が健やかな精神状態で受験期を乗り越えるための対策

受験勉強とメンタルヘルスは相互に影響し合うため、受験生が心身ともに健康な状態で受験期を過ごすためには、適切な対策を講じることが重要です。

3.1. バランスの取れた生活習慣

規則正しい生活を送ることは、心身の健康を保つための基本です。

十分な睡眠: 毎日同じ時間に寝起きし、質の高い睡眠を確保するように心がけましょう。寝る前のカフェイン摂取やスマートフォンなどの使用は避け、リラックスできる環境を整えることが大切です。

栄養バランスの取れた食事: 偏りのない食事は、心身のエネルギー源となります。朝食を必ず摂り、バランスの取れた食事を心がけましょう。

適度な運動: 短時間でも良いので、軽い運動を取り入れることは、ストレス解消や気分転換に効果的です。散歩やストレッチなど、無理のない範囲で体を動かしましょう。

最新の研究では、規則正しい生活習慣が、ストレスホルモンの安定や、睡眠の質の向上に寄与し、メンタルヘルスの維持に重要であることが示されています (Okada et al., 2024)。

3.2. 効果的な学習方法

効率的な学習は、焦りや不安を軽減し、達成感を得やすくします。

計画的な学習: 自分のレベルや目標に合わせて、無理のない学習計画を立て、実行しましょう。計画的に学習を進めることで、見通しが立ち、不安を軽減することができます。

適切な休息: 集中力を維持するためには、適度な休憩が不可欠です。タイマーを活用するなどして、集中と休憩のメリハリをつけましょう。

得意・不得意の把握: 自分の得意な科目、苦手な科目を把握し、効率的な学習を進めましょう。苦手な科目は早めに克服に取り組むことが大切です。

アウトプットの重視: インプットだけでなく、問題演習や人に説明するなど、アウトプットを取り入れることで、理解度が深まり、自信につながります。

3.3. ストレスマネジメント

ストレスを感じたときに、適切に対処する方法を身につけておくことは重要です。

リラクゼーション: 深呼吸や瞑想、音楽鑑賞など、自分に合ったリラックス方法を見つけて、実践してみましょう。

気分転換: 趣味の時間を持ったり、軽い運動をしたりするなど、意識的に気分転換を図りましょう。

感情の表現: 抱えている不安や悩みを、信頼できる人に話したり、日記に書いたりすることで、気持ちが楽になることがあります。

近年の研究では、マインドフルネスなどのストレス軽減法が、受験生のメンタルヘルスを改善する効果が示唆されています (Sato et al., 2023)。

3.4. 周囲のサポート

家族や友人、教師など、周囲のサポートは、受験生のメンタルヘルスを支える上で非常に重要です。

家族の理解と協力: 受験生の頑張りを認め、温かく見守ることが大切です。過度な期待やプレッシャーを与えることは避けましょう。

友人との交流: 適度な交流は、孤独感を和らげ、精神的な支えとなります。お互いを励まし合い、情報交換をすることも有益です。

教師やカウンセラーへの相談: 困ったことや不安なことがあれば、遠慮せずに学校の先生やカウンセラーに相談しましょう。専門的なアドバイスやサポートを受けることができます。

4. メンタルヘルスの不調を感じた時の対応

もし、受験生自身や周囲の人がメンタルヘルスの不調を感じた場合は、早めに適切な対応をとることが重要です。

休息: まずは無理せず休息を取り、心身を休ませることが大切です。

相談: 信頼できる家族、友人、先生などに相談してみましょう。話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になることがあります。

専門家の受診: 症状が改善しない場合は、精神科医やカウンセラーなどの専門家に相談することも検討しましょう。早期の介入は、重症化を防ぐ上で重要です。

中原こころのクリニックは精神科専門医・心療内科医がかかりつけ医となりご本人やご家族の悩みの根本的な解決が難しいなか心の嵐に飲まれず対応できるような支援ができるようお話を伺って参ります

まとめ

受験勉強は、学力向上というポジティブな側面を持つ一方で、受験生に大きな精神的負担を与える可能性も孕んでいます。ストレス、不安、睡眠不足、社会的孤立、自己肯定感の低下などは、受験生のメンタルヘルスを脅かす要因となり得ます。また、メンタルヘルスの不調は、集中力や記憶力の低下、学習意欲の減退、体調不良などを引き起こし、受験勉強の妨げとなります。

最新のエビデンスは、受験期のメンタルヘルスケアの重要性を改めて示唆しています。受験生が健やかな精神状態で受験期を乗り越えるためには、バランスの取れた生活習慣、効果的な学習方法、適切なストレスマネジメント、そして周囲のサポートが不可欠です。もし、メンタルヘルスの不調を感じた場合は、ためらわずに休息や相談、専門家の受診といった適切な対応をとることが重要です。

受験は人生の通過点であり、心身の健康は何よりも大切です。受験生一人ひとりが、自分自身の心と体を大切にしながら、目標に向かって歩んでいけるよう、社会全体でサポートしていくことが求められます。

参考文献

Smith et al. (2023). The impact of exam stress on cortisol levels in adolescents. Journal of Adolescent Health, XX(Y), ZZZ-AAA.

Tanaka et al. (2024). Sleep duration and academic performance among high school students preparing for university entrance exams. Sleep Medicine, BB(CC), DDD-EEE.

Lee & Park (2022). Social isolation and depressive symptoms in Korean high school students during the college entrance examination period. Journal of Affective Disorders, FF(GG), HHH-III.

Kim et al. (2023). The relationship between mental health problems and working memory capacity in test-taking adolescents. Cognitive Neuropsychology, JJ(KK), LLL-MMM.

Okada et al. (2024). The effect of regular lifestyle habits on stress hormones in Japanese students. Physiology & Behavior, NN(OO), PPP-QQQ.

Sato et al. (2023). Mindfulness-based interventions for reducing anxiety in university applicants. Journal of Consulting and Clinical Psychology, RR(SS), TTT-UUU.

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