うつ病からの復職者の再発再燃を防ぐために精神科医と産業医ができること 2

被雇用者(患者様)・産業医・主担当医に職場の上司や人事を交えて病状の評価及び、復職への調整を私たちは行っております。私は主に主担当医としての立場での復職への治療を奏功させていくことが任務となります。休職においては適応障害やうつ病が主病名となること多くなりますが、診断以上に大切にしていることは病状が回復したところで労務復帰には仕事の質やボリューム、職場環境など外的な要因がある程度改善されないと症状が改善しても持続可能な労務が困難となり再度の休職となってしまいます。外来で疾病に限らずほぼ同じようにお伝えさせて頂いていることは「働かなきゃではなく働きたいという意思モチベーションが見いだせること」、「労務は一時的なものではなく持続可能なもの」そして労働環境が本人の心にとって許容されることになります。

労務復帰に焦りは禁物ですし、また社会から離れる時間が長くなるほどに復職は困難となってきます。医療面接のなかで症状ならびに労働環境について適宜ヒアリングを行っていくことが私のタスクのなかで重要視していることになります。

具体的には本人に対して、薬物療法、精神療法、休養などを提案するとともに、復職に向けてできる限りの助言にて対応をおこなっております。認知行動療法を取り入れ、認知の修正(思考の癖の修正)、復職後の再発再燃防止を念頭に価値観や行動パターンなどを患者様とともに考えていくことも多くあります。復職後に残念ながら、治療のあとに獲得した感覚が減弱し、病前の性格や行動パターンに戻りその結果再燃してしまうこともあります。

それを防ぐためには復職にあたり、職域と本人の考え方や行動パターンについて理解を深めていく必要があり医療機関と職域での連携が大事となります1)

2000年に国から『事業場における労働者の心の健康まちづくりのための指針』がだされ、ここに「4つのケア」という言われる内容が含まれます3)。4つのケアとはセルフケア、上司部下といった関係性などラインによるケア、事業場外資限によるケアの「4つのケア」から職域のメンタルヘルス体制を構築することが示されている。精神科主治医とは職域から離れた資源事業内に該当し、直接セルフケアやラインによるケアに関わるよりは事業内産業保健スタッフと連携を行い逆行性に患者様に(セルフケア)まで情報を共有することが重要である。

復職規定については2004年に国が出して以降改訂を続けている「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰手引き」2)を参照としてみましょう。

第1ステップ  病気休業開始及び休業中のケア

第2ステップ  主治医による職場復帰可能判断

第3ステップ  職場復帰の可否判断および職場復帰支援プランの作成

第4ステップ  最終的な職場復帰の決定

第5ステップ  職場復帰後のフォローアップ

主担当医から復職可能の診断書が出ても、状況的には第2ステップであり、第3.4ステップは職域内で行われることが多くなるべくここでの判断にお力添えをしたいと考えております。もちろん復職後の緊張やストレスに対処できるよう第5ステップの主担当医の役割も非常に重要なものとなります。4つのセルフケアについてはもう少し細かく記載します

1 セルフケア  労働者本人のストレス対策、ストレス発散

2 ラインによるケア  管理監督者が行う職場などの改善と相談への対応

3事業場内産業保健スタッフ等によるケア 産業医などによる専門的ケア

4 事業外資源によるケア  事業外における専門機関によるケア

休職になるとはやく戻らないとと焦ってしまい、休職期間に目がいきがちになります。

患者様のコンディションと労働環境改善には患者様のイメージを主担当医、職域と共有することが非常に大事であることをご理解いただけたら幸いです。

中原こころのクリニック

四ノ宮 基

文献1 井上幸紀:産業現場に対し精神科主治医ができること、できないこと.精神雑誌,116(8) ;697-701,2014

文献2  厚生労働省:心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引きーメンタルヘルス対策における職場復帰支援

文献3  厚生労働省:事業場における労働者の心の健康づくりのための指針

武蔵中原駅から徒歩1分の心療内科 “中原こころのクリニック”

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