日照時間と季節性うつ病(感情障害)

11月を迎え、気温が下がり日照時間が短くなってきました。

 

乾燥し、感染症のリスクが高まるとともに北半球に住む私たちにとって日照時間が短くなることと、気分の変調についてお話致します。季節性うつ病は往来、1984年に「冬季うつ病」として精神科医ローゼンタールにより報告された精神疾患であり、秋から冬にかけてうつ状態が出現し、春先の3月頃に症状が改善するという繰り返し(年を超えた周期性)パターンがあることが特徴です1)

 
季節性感情障害(以下、SAD)有病率は、欧米では1~10%とされており、邦国においては一般人口を対象におこなった調査において2.1%においてSADが疑われたとの報告されております2)。発症年齢は女性に多く、冬季に反復する場合の有病率は生活圏緯度、年齢、性別により差があり、高緯度では増大するといわれております。また、気象条件も影響を与え、白夜が存在する北欧ではこの傾向はさらに顕著にあります。

SADは症状出現時期に特徴があることや低緯度地域への旅行により症状の改善または消失から日照時間と個人の概日リズム(体内時計の変化)が関連していると推定されています。その為、うつ状態に対しては光線療法(ブライトライトセラピー以下BLT)とSSRIを中心とした薬物加療により治療をしていきます。

 

当院ではBLTは対応しておりませんが、家庭でできるBLTについて助言を診察のなかでさせていただき状況に応じて薬物加療を併用しております。BLTでは高照度光療法が推奨されており、2500から10000ルクス照度の光を照射するというものです。照度が高いと1回照射時間を短縮可能であり、照度と抗うつ効果には正の相関性があります3)。2週間程度で症状に改善傾向を認めますが、冬季には連日行うことが推奨されております。SADは双極性感情障害と「概日リズム障害」という共通点から関連性の指摘もあります1)。さて、薬物加療が使用しにくい(向精神科薬は禁忌というより注意が多い)状況にあり妊娠中ならびに産褥期や子育て中の女性の治療には慎重を期する必要があります。
妊娠中のうつ病に対する高照度光線療法に新しい論文がでましたのでご紹介致します。

 
Effects of bright light therapy for depression during pregnancy: atrandomised,double-blind control trial4)。

妊婦の11~13%がうつ状態に苦しみBLTによりうつ病の対する治療効果を無作為二重盲検比較試験にてデザインし治療効果を研究した。2016年11月から2019年3月までのオランダにおける一次および二次治療。[参加者] 67人の妊婦(12人) -うつ病性障害のDSM-5診断(精神障害の診断および統計マニュアル)を伴う-妊娠32週齢)。[介入]参加者は、BLT(9000ルクス、5000 K)または薄暗い赤色光療法(薄暗い赤色光療法)のいずれかによる治療にランダムに割り当てられました。 DRLT、100 lux、2700 K)、これはプラセボと見なされます。 6週間、両方のグループは、目覚めたときに自宅で30分間毎日治療されました。フォローアップは、介入中、治療の6週間後、治療後3週間および10週間、分娩後2ヶ月で毎週行われました。[一次および二次転帰測定]うつ症状は、主にハミルトンうつ病尺度の構造化面接ガイドで測定されました-季節性情動障害。二次測定は、うつ病のハミルトン評価尺度とエジンバラ産後うつ病尺度でした。これらの質問票の評価尺度スコアの経時変化は、一般化線形混合モデルを使用して分析されました。[結果]うつ病スコアの中央値は、BLTグループで40.6%〜53.1%、DRLTグループで50.9%〜66.7%減少しました。 BLTとDRLTの間で症状変化スコアに統計的に有意な差は見つかりませんでした。感度と事後分析は我々の発見を変えなかった。[結論]うつ病の妊婦のうつ病症状は両方の治療群で改善した。これらの反応が真の治療効果、非特異的治療反応、プラセボ効果、またはこれらの組み合わせを表すかどうかを判断するには、さらに研究が必要です。

 
光線療法に使用する装置は一般化されオンラインや家電量販店においても購入可能ですが、過度な期待は禁物であり説明書をよく読みご利用ください。
光は哺乳類の目(網膜神経節細胞)に受容体があり、睡眠関わるメラトニンといった内分泌ホルモンに限らずコルチゾールや他のホルモンについても光誘発効果があるとされています5)。光照度は晴天、雨天において差異は少ない一方で野外と比較すると屋内窓際にて照度を計測すると1/5程度まで減衰します6)。
お天気に関わらず、気分が重い日こそ玄関先まで足を伸ばして外を眺めてみるのはいかがでしょうか。

 

参考文献
1) Norman E. Rosenthal:「超越瞑想 癒しと変容」 さくら舎 2013
2)アメリカ精神医学会:「DSM-5精神障害の診断と統計マニュアル」医学書院 2015
3)三島和夫:『最新医学』第71巻7月増刊号96-107 最新医学社2016
4)Bais Babette Kamperman et al.: BMJ open vol (10) 2020 oct 28
5)Hanifin John et al: ILAR jounal vol (60) issue (2) 2020 oct
6)社団法人 日本電気技術者協会 電気技術解説講座 

 

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